「中国哲学」は、中国の伝統的思考を、中国古典の精読を通じて分析し、広く東アジア世界の文化的特質を解明しようとする実証的学問である。
授業は、儒教の経典、諸子の文献、近年出土の新資料等を精読する「中国哲学」と「中国文化学」、漢籍資料の専門的知識およびその取り扱いについて考究する「漢籍資料学」などから成る。
研究室は、大阪大学中国学会・中国出土文献研究会・懐徳堂研究会などの事務局を兼ねる。学術誌『中国研究集刊』を刊行し、定例の研究会を主催するほか、名古屋大学の中国学関係研究室と定期的に研究交流を行っている。また大阪大学懐徳堂文庫の保存整理や電子情報化事業にも大きな役割を果たし、文学研究科懐徳堂研究センターの事業にも協力している。
研究室HPでは、研究室案内(スタッフ、学生、沿革、卒論・修論・博論リスト、卒業生の声)、授業情報、古典のことば、電子テキストなど充実したコンテンツを提供している。
教員紹介
教授 辛賢
しん ひょん 1967年、韓国ソウル生。2002年、筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程修了。博士(文学)。日本学術振興会外国人特別研究員(筑波大学)、2004年大阪大学大学院文学研究科講師、2022年4月より大阪大学大学院人文学研究科講師を経て、2023年9月より現職。 専攻:中国哲学、漢代易学 |
- 研究紹介
- 漢・唐代から宋代における易学・術数学関連の文献を調査し、その思想史的展開について研究を行っている。漢易の術数理論が、漢代以降、どのように受容されていったのか、とりわけ、新たな易学、いわば義理易が開かれる唐宋両代における漢易術数の波及、その様相について考察を行っている。漢易の「数」と「象」は、漢代的な論理展開の技術・手段に止まらず、それ自体が哲学的概念、思索の対象として進められていったが、その解釈学的変遷、特に宋代の学問形成に及ぼした影響について主な関心をもっている。
- メッセージ
- 近代以降、西洋の学術や文化の流入により、私たちはそれまでの儒教の権威の枠組から自由な価値判断ができるようになりました。しかし、これはそれまで長い間培われてきた儒教の伝統から脱却したことを意味するものではありません。むしろ、20世紀以降、西洋の新しい価値観の流入は、受ける側の伝統的思想の上に変容をもたらし、全く新しいものを生み出していることさえありうるからです。今日を生きる我々にとって中国古典研究のもつ意味はなにか、この問題について皆さんとともに悩み続けていきたいと思います。
- 主要業績
- 『漢易術数論研究―馬王堆から『太玄』まで―』(汲古書院、2002年);「『太玄』の「首」と「賛」について」(『日本中国学会報』第52集、2000年);「後漢易学の終章―鄭玄易学を中心に」(『東方学』第107輯、2004年);「易緯における世軌と『京氏易伝』」(共著『両漢における易と礼』汲古書院、2006年);「象」の淵源―「言」と「意」の狭間―」(『大阪大学大学院文学研究科紀要』第48巻、2008年); 「王弼忘象論再考」(共著『両漢儒教の新研究』汲古書院、2008年)
- 概説・一般書
- 「三国時代の思想―言語観の射程―」(『創文』496、創文社、2007年);『三国志論集』(共著、汲古書院、2008年);『知のユーラシア』(共著、明治書院、2011年)
2023年 9月更新