比較・対照言語学コース

この専門分野では、英語を対象言語として(また日本語や他の言語と比較対照することを通じて)、言葉の使用のあり方、その意味解釈、言語表現の産出メカニズム、歴史的な変遷など、様々な言葉に関する疑問に取り組んでいます。何よりも大切なことは、言語事実の発見であり、それぞれの疑問のあり方、視点に応じた独自の発見を目指してもらいたいと考えています。院生の研究分野は、意味論・語用論・認知言語学・談話分析・統語論・英語史など多岐にわたりますが、研究指導は各自の専門を最優先しています。また多くの学生が高等教育機関における英語教員として巣立っていきますので、総合的な英語力の向上が強く求められています。

研究室では「待兼山ことばの会」を適宜開催し、研究雑誌(Osaka University Papers in English Linguistics(OUPEL)) [論文はMLA International Bibliographyに掲載]を刊行しています。また全員参加による「談話会」では、書評や学会発表の予行演習など学年に合わせた発表を行い、自由な意見交換を行っています。詳しくは英語学研究室のホームページをご覧下さい。

教員紹介

教授 田中 英理 准教授 本田 隆裕

教授 田中 英理

p_tanakaeri2016.jpgたなか えり
1975年生。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。2007年博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、愛媛大学教育学生支援機構英語教育センター講師、大阪医科大学総合教育講座講師を経て2015年10月より現職。
専攻:英語学
研究紹介
専門分野は、形式意味論、統語論·意味論のインターフェース。特に、段階性(gradability)を示す述語(形容詞や動詞など)が通範疇的な特性を示す現象について研究を行っている。また、動詞の意味と統語論の関係にも関心を持っており、非能格自動詞が他動詞化するなどの特殊なヴォイスの交替についての研究を行っている。
一方で、理論言語学の英語教育への応用についても関心を持っており、これまでに明示的な音声学的指導を取り入れた教育実践などを行ってきている。
メッセージ
英語学(言語学)は、言語事実を丁寧に観察することの積み重ねによって成立しています。研究者によってそれぞれの理論的観点は異なっても、この点は共通していると思います。大学院では、教員、先輩院生とともに、理論の勉強だけでなく、是非言語事実の観察力、分析力を鍛えて欲しいと思います。また、学会発表、論文執筆のためには英語の運用能力が欠かせませんので、英語力を日頃から鍛えて欲しいと思います。
主要業績
"The notion of path in aspectual composition: Evidence from Japanese." Event Structures in Linguistic Form and Interpretation (J. Dolling and T. Heyde-Zybatow (eds.) ) Berlin: Mouton de Gruyter. (2008) ;「英語音声学的音韻論的特徴の習得を目指した授業の効果検証」JALT Journal 33-1. (2011、山西博之と共著)

2024年4月更新

准教授 本田 隆裕

p_honda2024.jpgほんだ たかひろ
1983年生。2001年3月京都府立綾部高等学校卒業。2001年4月大阪大学文学部人文学科入学。2013年3月同大学大学院博士後期課程修了。博士(文学、大阪大学)。神戸女子大学文学部助教、同大学准教授を経て、2024年10月より現職。
専攻:比較・対照言語学
研究紹介
専門分野は統語論(生成文法理論)、概念意味論。特に動詞句の構造(動詞の項構造)や受動文、there 構文、同族目的語構文などに関する研究を行っている。動詞は他動詞、非能格動詞、能格動詞、非対格動詞のいずれかに分類されることがあるが、このいずれにも該当しない動詞は存在しないのか反語彙主義の視点から考察している。様々な文の統語構造を詳細に分析することで、ヒト(Homo sapiens)の知性の起源や特性を明らかにすることを目指している。
メッセージ
研究成果というものは、無から新たな知見を見出して得られる場合もあれば、すでにある複数の先行研究のうち、一見すると無関係に見えるようなものの中に新たに共通点を発見することで得られる場合もあります。当初想定していなかった研究方針をふとした瞬間に思いつく可能性もあります。いずれにしても、そういった serendipity は本当に偶然に訪れるよりも、常にあることについて熟考している場合に生じる可能性が高いです。好奇心を持って、様々な資料に触れてください。
主要業績
“The Syntax of Die,” JELS 41, 118–127. (2024);
“A Split Phi-Features Hypothesis and the Origin of the Expletive There,” English Linguistics 37, 1–33. (2020);
“Effects of a Morphological Approach to Raising Learners’ Awareness of Sentences with Be,” 『英語教育研究』39号, 17–36. (2016)

2024年10月更新