当専門分野では、中世から現代にいたるフランスの小説、詩、演劇、思想、評論などあらゆるジャンルの文学テクストを対象として、その豊かな意味の広がりをとらえるために、長い文学・芸術の伝統、文化的・社会的事象、同時代の風俗・習慣などに関する幅広い調査を踏まえつつ、実証的かつ創造的な教育研究を行っています。フランス文学研究室が母胎となって組織している大阪大学フランス語フランス文学会は国際的な機関誌『ガリア』を発行し、年2回の研究会を開催して活発に活動しています。また、フランスの現代の小説家、詩人、学者との交流も盛んで、講演会、セミナーを通して、文学創作をリアルに感得する機会を提供するとともに、日仏の教育研究交流を積極的に推進しています。
より詳しい情報はフランス文学研究室のホームページをご覧ください。
教員紹介
教授 山上 浩嗣 特任准教授(常勤) Eric Avocat 准教授 平光 文乃
教授 山上 浩嗣
やまじょう ひろつぐ 1966年生。京都大学文学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。パリ・ソルボンヌ大学にて文学博士号取得(2010年)。 東京大学大学院総合文化研究科助手、関西学院大学社会学部専任講師、同准教授、同教授、大阪大学大学院文学研究科准教授を経て、2015年より現職。放送大学客員教授も務める(2015年~)。 専攻:フランス文学・思想。 |
- 研究紹介
- 専攻はフランス文学・思想、とくにブレーズ・パスカル研究。これまで、『パンセ』を中心的な題材として、パスカルの考えるキリスト教信仰において「身体」という観念が果たす両義的な役割について考察してきました。現在は、パスカルの共感と同時に強い反発をも引き起こしたモンテーニュの『エセー』に関心をもっています。また、西洋哲学の伝統思想と、17世紀の新思想を総合的に取り入れた重要文献である『ポール=ロワイヤル論理学』の読解にも取り組んでいます。
- メッセージ
- パスカルの思想は、宗教、哲学、政治、科学などの多様な領域の接点にあります。彼の作品に限らず、古典的テクストはつねに、さまざまな分野に同時に関わる反省を含んでいます。したがって、逆説的に響くかもしれませんが、専門的な文献研究は学際的な視野を必要とします。とりわけ、モンテーニュ、ディドロ、ルソー、プルースト、ロラン・バルトを輩出したフランスの文学の伝統と特徴は、このような間領域性にあります。いわゆる「文学」の枠を超えた関心をもつ学生にこそ、ぜひ研究に加わってほしいと願います。
- 主要業績
- 『パスカルと身体の生』(大阪大学出版会、2014);エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ『自発的隷従論』(翻訳、ちくま学芸文庫、2013);Pascal et la vie terrestre. Épistémologie, ontologie et axiologie du « corps » dans son apologétique(『大阪大学大学院文学研究科紀要モノグラフ編』52巻、2012);「パスカルと三つの無知」(『大阪大学大学院文学研究科紀要』53巻、2013);« Le bien et le mal dans la pensée politique de Pascal » (Revue d’Études Francophones, no. 24, 2014, Université Nationale de Séoul) ; « La dignité de l'homme selon Pascal »(『ガリア』50号、2010)
- 概説・一般書
- 『パスカル「パンセ」を楽しむ―名句案内40章』(講談社学術文庫、2016);アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ―「エセー」入門』(共訳、白水社、2014);『新・フランス語文法(三訂版)』(共著、朝日出版社、2017);『フランス語入門Ⅰ』(共著、放送大学教育振興会、2012);『境界域からみる西洋世界―文化的ボーダーランドとマージナリティ』(分担執筆、ミネルヴァ書房、2012);『西洋文学―理解と鑑賞』(分担執筆、大阪大学出版会、2011);『人間の光と闇―キリスト教の視点から』(分担執筆、関西学院大学出版会、2010);『ブローデル歴史集成』Ⅰ-Ⅲ(共訳、藤原書店、2004-2007)
2020年 8月更新
特任准教授(常勤) Eric Avocat
エリック・アヴォカ 1972年生まれ。高等師範学校卒業。ギリシア・ラテン古典文学大学教授資格取得。フランス文学博士。イェール大学(1995-1996年)、京都大学(2005-2015年)で教員を務める。フランスのリセでの教員経験もある。 専攻:フランス文学 |
- 研究紹介
- Depuis ma thèse de doctorat sur les orateurs de la Révolution française et leur recours à une rhétorique issue du répertoire tragique, les relations entre théâtre et politique ont été continument au cœur de mes recherches. Je travaille actuellement sur la manière dont les pièces de théâtre de cette époque ont montré la vie des assemblées politiques. Mais je m’intéresse aussi à l’image de la Révolution française dans la littérature et l’historiographie, aux différentes manières de la raconter et de l’analyser, non seulement à partir de modèles théoriques ou idéologiques, mais aussi de représentations culturelles et de mythes.
- メッセージ
- Dans mon travail avec les étudiants, mon souhait le plus cher est de réussir à faire aimer, non pas la France, mais la langue française, pour la richesse et la diversité des savoirs, des œuvres, des réflexions et des débats, auxquels elle donne accès. Au-delà des aspects de la culture française que les étudiants découvriront dans mes différents cours, leur point commun est d’inviter à une exploration des mystères de la langue : c’est une aventure ou une enquête que je propose, à l’intérieur de la langue, pour y voir fonctionner non pas une pensée française (qui n’existe pas), mais des façons de penser en français. Pour les étudiants, l’essentiel est d’avoir cette curiosité du voyage, ce goût de l’aventure, et tout le reste viendra naturellement…
- 主要業績
- “Neuf acteurs en quête d’histoire : les jeux du théâtre et de la Révolution dans Notre terreur”, Comment la fiction fait histoire, textes réunis par Noriko Taguchi, Paris, H. Champion, 2015. ;“Le discours le plus tragique et le plus pur : une ébauche de l’hamartia révolutionnaire”, Orages. Littérature et culture, n°14, mars 2015, Le tragique moderne. ;“Orateurs et héros ? Un rôle de théâtre problématique sous la Révolution”, Le Personnage historique de théâtre de 1789 à nos jours, sous la direction d’Ariane Ferry, Paris, Classiques Garnier, 2014. ;“La Révolution française des écrivains : Mercier, Hugo, Domecq, Michon, l’histoire écoutée aux portes de la légende”, 京都大学フランス語学フランス文学研究会XLIV, 2013. ;« La compagnie des spectres : ce que font les hommes de la Révolution dans Le Rouge et le Noir », L’Année stendhalienne, n°9, 2010.
- 概説・一般書
- Le Japon vu par Hokusai, Éditions de la Réunion des musées nationaux – Grand Palais, 2014.
2018年 8月更新
准教授 平光 文乃
ひらみつ あやの 1976年生。京都大学文学部卒業(社会学専修2000年、フランス文学専修2005年)京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士号(文学)取得(2012年)。大阪大学大学院文学研究科助教、同人文学研究科助教を経て、2023年より現職。 専攻:フランス文学、マルセル・プルースト研究 |
- 研究紹介
- プルーストの作品における部屋(chambre)をテーマに、作品内における主人公・語り手の部屋の描写が果たす役割を考察するとともに、19世紀後半以降フランスの文化・文学史における室内空間、特に「夢想の室内」の文脈にプルーストの部屋や室内装飾を位置づける研究を行ってきました。現在はその派生的問題を草稿調査によって明らかにしていますが、今後は部屋の描写が外へと開いてゆく、旅のテーマを扱いたいと考えています。またデジタルヒューマニティーズとして、AIを用いた手書き草稿の読解にも関心があります。
- メッセージ
- 19世紀と20世紀の間にそびえる分水嶺とも言われる、プルーストの未完の長編小説『失われた時を求めて』(1913-1927)には、いわゆる文学の枠組みにとどまらない、美学、哲学、心理学、社会学、建築学など、間領域的なテクストが含まれています。私自身、プルーストと同時代の部屋や室内装飾に関して、社会・文化的文脈を紐解くことで、新たな作品読解の提示を試みてきました。既存の枠組みを超えるような知的好奇心を持つ学生に出会えることを楽しみにしています。
- 主要業績
- Les Chambres de la création dans l'œuvre de Marcel Proust, Paris, H. Champion, 2019;『装飾の夢と転生1』(共著、国書刊行会、2022:第九章「マルセル・プルーストの作品における室内装飾と芸術創造」);「『見いだされた時』冒頭に関する考察―タンソンヴィル滞在か、タンソンヴィルの部屋の描写か―」(『ガリア』62号、2023);「『失われた時を求めて』の部屋の描写における無意志的記憶と挿話的レミニサンス」(『ステラ』39号、2020); « L'ameublement et la création artistique dans "Sur la lecture" de Proust » (『ステラ』35号、2016)
- 概説・一般書
2023年 4月更新