日本文学・日本語史学

日本文学は、上代から、中古・中世・近世・近現代にいたる、各時代の日本の文学を研究の対象とする。個々の作品の詳細な読解をはじめとし、作家、時代思潮などについて、さまざまな方法によってアプローチし、これまでも大きな成果を得てきている。所属するのは、滝川幸司教授(平安文学)、斎藤理生教授(近現代文学)、渡邊英理准教授(近現代文学)で、このほか定期的に学外から非常勤講師を迎えている。
大阪大学国語国文学会の機関誌「語文」を年2回発行、大阪大学古代中世文学研究会では月1回の研究発表会と年2回の「詞林」の発行などを行い、大阪大学近代文学研究会では「阪大近代文学研究」を刊行している。上方文藝研究の会は学外の研究者とも連携して「上方文藝研究」を刊行している。

日本語史学は、国語の音韻、文字・表記、文法、語彙などについて、上代から近・現代にわたり、通時的・共時的に研究する。本研究科においては、「日本語学」が現代語を主な対象とするのに対し、通時的研究に重点を置き、時代と遡った文献に見える国語を主な対象とする。

文献により実証することを重視するので、文献をどう読むかという点で「日本文学」の知識も必要で、研究活動をともにしている。

指導教員ごとの、修士論文・博士論文の個別指導と、3名の教員合同での論文作成演習を行う。「日本文学」「比較文学」とともに、10月に修士論文中間発表会、7月・11月に大学院生研究発表会を行う。学会での研究発表なども勧めている。

その他、国語語彙史研究会・土曜ことばの会の事務局を置くなどしている。

教員紹介

教授 岡島 昭浩 教授 滝川 幸司 教授 斎藤 理生 教授 岸本 恵実 教授 渡邊 英理 准教授 浅井 美峰 准教授 北﨑勇帆

教授 岡島 昭浩

おかじま あきひろ
1961年生。1987年、九州大学大学院文学研究科博士後期課程中退。文学修士(九州大学、1986年)。九州大学文学部助手、京都府立大学女子短期大学部講師・助教授、福井大学教育学部(教育地域科学部)助教授、本研究科助教授・准教授を経て2010年現職。
専攻:国語史・日本語学史
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研究紹介
日本における漢字音の歴史、漢字音研究の歴史について研究することを足がかりにして、国語音韻史、日本語学史、辞書史についても研究している。なお、専攻に書いてある「日本語学史」は、日本語研究の歴史と、日本における言語研究の歴史を合わせた呼び名のつもりである。また、研究とは言えないような、言語に関する意識の歴史をも含めて研究したいと思っている。
メッセージ
過去から現代まで伝わって来たものを、我々は後世に伝えて行けるだろうかと不安になることがある。見出した資料が複写されることもなく天下の孤本として存在しているのを見たり、長く閲覧する人の居なかった書物であれば他所にあろうとなかろうと棄ててよいという意見を聞いたりする時である。文学研究に志す人も、よいものだけ伝えればよいと思うのではなく、多くの情報を伝えるよう考えて欲しい。
主要業績
『シリーズ日本語史2 語彙史』(岩波書店2009、共著);「「ひいやり・ふうわり」型から「ひんやり・ふんわり」型へ」『国語語彙史の研究36』(和泉書房 2017);「明治中期の回覧雑誌「共究会文章会」」『大阪大学大学院文学研究科紀要』54;「半濁音名義考」『筑紫語学論叢』(風間書房2001);「江戸期韻学における音韻日月燈」『明清時代の音韻学』(京都大学人文科学研究所2001)
概説・一般書
「元禄の辞書」(『元禄文学を学ぶ人のために』世界思想社2001)

2018年 9月更新

教授 滝川 幸司

たきがわこうじ
1969年生。1998年大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)(大阪大学)。
1998年奈良大学文学部専任講師、2003年同助教授、2007年同准教授、2013年同教授、2015年京都女子大学文学部教授。2019年10月より現職。
専攻:平安文学

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研究紹介

専門は、平安時代の文学で、特に和歌と漢詩文。現在ではあまり評価されないものの、当時の貴族が表現に意を用いた、公式な場、集団の場での和歌や漢詩文、それに伴って、天皇がどのように文学、文学の場と関わるのか、あるいは、当時の官僚(貴族)にとって文学・学問とは何かを考えています。そのためには文学資料だけではなく歴史資料の読解も必要となりますが、歴史的には注目されない、中下級貴族のリアリティを感じることができます。

メッセージ
なぜ千年も前の作品を読むのかといえば、〈日本文学〉であるのに、自分とはまったく異なる環境で、まったく異なる世界を見出せるからです。私たちが実体的に経験できることなど限られているからこそ、様々な文学作品を読み、その多くが共感できないものであればこそ、にも拘わらず、理解しようと努めることで、自分の常識・思考範囲の狭さを撃つのだと、常に考えています。〈日本文学〉と区分けされていますが、考えれば考えるほど、〈日本〉〈文学〉という概念が揺らぎます。それをこそ体験して欲しいと思います。
主要業績
『天皇と文壇 平安前期の公的文学』(和泉書院、2007年);『菅原道真論』(塙書房、2014年);『新撰万葉集注釈巻上(一)(二)』(共編、和泉書院、2005、2006年);『菅家文草注釈文章編第一冊・第二冊(巻七上・下)(共著、勉誠出版、2014、2019年)
概説・一般書
『平安文学研究ハンドブック』(共著、和泉書院、2004年);『文化装置としての日本漢文学』(共著、2019年、勉誠出版);『菅原道真 学者政治家の栄光と没落』(中公新書、2019年)

2023年 7月更新

教授 斎藤 理生

さいとう まさお
1975年生。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)(大阪大学、2004年)。群馬大学教育学部講師、同准教授を経て、2014年4月より現職。
専攻:日本近現代文学
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研究紹介
太宰治と織田作之助を中心に、昭和期の小説について研究しています。「無頼派」としてのイメージが強い2人の作家ですが、作品そのものをもっと丁寧に読んだり、歴史的に位置づけたりする必要があると考えています。これまでは主に、太宰の小説を、〈笑い〉を喚起するしくみに注目して読み解いてきました。近年は、作之助の小説が先行作品や同時代言説、発表媒体をどのように活かした作りをしているのかを解明することにも関心を持っています。
メッセージ
文学作品は、自室で寝転びながら読んでも楽しめます。しかし違う味わい方もあります。表現のしくみを丁寧にたどったり、典拠と比べ合わせたり、すぐれた先行研究を踏まえて読み直したり、さりげなく使われている言葉の発表当時の意味合いを調べたり、顔の見える相手と議論したりする。そのようなアプローチによって初めて見えてくる文学の魅力を、一緒に追究できればと思います。
主要業績

『新世紀 太宰治』(共編著、双文社出版、2009);『太宰治の 小説の〈笑い〉』(双文社出版、2013);「「二十世紀旗手」評釈(1)~(5)」(「太宰治研究」2013.6~2017.6);「方法としての坂田三吉―織田作之助の作品と将棋―」(「日本近代文学」2017.5)

概説・一般書
「太宰治作品ガイド100」(共著、「文藝別冊 太宰治」河出書房新社、2009);「小林秀雄「政治家」解説」(「新潮」2015.9);『テクスト分析入門』(共著、「第15章 語れないことを読む─テクスト分析の先へ─太宰治「桜桃」Ⅱ」担当、ひつじ書房、2016)

2021年 7月更新

教授 岸本 恵実

きしもと えみ
1972年生。2000年、京都大学大学院文学研究科国語学国文学専修博士後期課程研究指導認定退学。博士(文学)(京都大学、2003年)。大阪外国語大学助手・講師・助教授、国際基督教大学准教授、京都府立大学准教授を経て、2017年4月より現職。
専攻:国語学
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研究紹介
16・17世紀、ザビエルに始まる日本宣教に伴って作られたキリシタン資料、なかでも、ラテン語・ポルトガル語・日本語対訳の『羅葡日辞書』(1595)や日本語・ポルトガル語対訳の『日葡辞書』(1603-04)などについて、当時の日本語の意味や用法がどのように記されているか、どのように編纂されているか、国内外の他の書物とどのような関係にあるかなどを研究しています。
メッセージ
キリシタン資料は、国語学において、とくに音韻史・文法史上重視されてきました。近年はさらに、他の日本語文献と同様、新しい視点からの研究も活発になっています。ほぼ同時期の、中世末期から近世初期の様々な日本語文献との比較はもちろん、宣教師たちの知的基盤であるヨーロッパの文献や、アジア・アメリカなど他の宣教地で作られた現地語文献との比較も本格的に展開されるようになりました。今後国語学で明らかにされる成果とその発信は、国内外で期待されているといえるでしょう。
主要業績
『ヴァチカン図書館蔵 葡日辞書』京都大学文学部国語学国文学研究室編・臨川書店(1999)翻刻・索引・解説。“The Process of Translation in Dictionarium Latino Lusitanicum, ac Iaponicum.” Journal of Asian and African Studies 72 (2006).「宣教を意識した『羅葡日辞書』の日本語訳」『訓点語と訓点資料』第121輯(2008)。“Translation of Anatomic Terms in Two Jesuit Dictionaries of Japanese.” Zwartjes, Otto, Zimmerman, Klaus and Schrader-Kniffki, Martina eds. Missionary Linguistics V: Translation theories and practices, John Benjamins, Amsterdam (2014).『フランス学士院本 羅葡日対訳辞書』清文堂出版(2017)解説。
概説・一般書
「キリシタン語学の辞書」豊島正之編『キリシタンと出版』八木書店(2013)

2019年 7月更新

教授 渡邊 英理

わたなべ えり
東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得後満期退学。博士(学術)(東京大学、2012年)。宮崎公立大学人文学部准教授、静岡大学人文社会科学部准教授など、2021年4月大阪大学大学院文学研究科准教授を経て、2023年1月より現職。
専攻:近現代日本語文学
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研究紹介
中上健次、崎山多美、干刈あがたなど、近現代の日本語文学を研究しています。これまで、これら作家のさまざま路地を描く小説群に着目し、「戦後文学」/「現代文学」を(再)開発の視座から再考する作業を試みてきました。(再)開発を問うことは、近代そのものを問題化することにも通じており、近代明治期から現代までの空間編成とそれに相即した言説編成、その変遷過程にも関心を持っています。また、沖縄奄美群島に所縁の文学や「越境文学」を、ジェンダーや脱植民地化などの観点から考察することも続けています。
メッセージ
わたしたちの日常世界は、明示的なルールでのみ成立しているのではなく、空気のように不可視化された規則に拘束されたり、見えない境界線に分断されたりもしています。文学の言葉は、この目に見えにくい規範や境界を可視化し、同時に、それらに転覆や逸脱、撹乱を及ぼすことで、現実を動揺させ異化することもします。言わば、目に見えない現実までをも描きだし、現実をまだ見ぬ世界へ書き換えようとする。いまある世界を所与のものとしない文学の可能性を考えていきたいと思います。
主要業績
単著『中上健次論』(インスクリプト、2021);「開発と「公共性」『戦後日本を読みかえる三』(臨川書店、2019);「動物とわたしの間」『翻訳とアダプテーションの倫理』(春風社、2019);「開発と言葉」(『社会文学』50号、2019);「沖縄から描くアジア像」『アジアと戦争の記憶』(勉誠出版、2018)、「激情から路地へ」『ユリイカ』2008年10月号(青土社);「流動する者たちをつなぐもの」『道の手帖 小林多喜二と蟹工船』(河出書房新社);「儚い者たちと相互扶助」『現代思想』2007年3月号(青土社)
概説・一般書
共編著『クリティカル・ワード 文学理論』(フィルムアート社、2020);『戦後文学の〈現在形〉』(平凡社、2020、李良枝・中上健次・崎山多美の項);「「体を具なった言葉」から生きる場の痛みに触れる―上間陽子『海をあげる』」『週刊金曜日』(2021年2月12日号);「「規格外」の生や小さな声を肯定する―温又柔『魯肉飯のさえずり』」『図書新聞』3473号(2020年11月28日); 「「アジア的身体」の現在形―梁石日・中上紀『タクシーガール』」『週刊金曜日』(2019年8月30日号);『漱石事典』(翰林書房、2017)

2023年 1月更新

准教授 浅井 美峰

あさい みほ
1988年生。お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士後期課程修了、博士(人文科学)(2022年、お茶の水女子大学)。2022年お茶の水女子大学みがかずば研究員を経て、2023年4月より現職。
専攻:日本中世文学
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研究紹介
中近世、特に室町時代を中心に、連歌とその古注釈について研究をしています。連歌会に参加して句を詠むために、どのような知識・教養が必要だったか、どのようにそれを学習・教育していたかを手がかりに、中世の人々の文化的営為の実態について考えています。当時の人々を熱狂させた「連歌」という文芸がもたらしたものは数多くあり(例えば、『伊勢物語』や『源氏物語』のような古典文学が今も読まれているのは連歌師達の活動によるところも大きい)、その影響についても研究したいと思っています。
メッセージ
「日本文学を研究することが直接的に何の役に立つのか」という問いかけを受けることがあるかもしれません。もしくは、既に受けたことがあるかもしれません。中世に於いては、「連歌会に参加できる」という一点においても、文学の知識はとても「役に立つ」ものでした。価値の在処を知るのは、研究の第一歩です。人々の営みの中で物事を考える尺度が様々な変化を遂げているということを理解し、過去・現在・未来を見通す眼を養い、自信を持って「自分の研究は価値がある」と言えるようになってほしいと思います。
主要業績
『連歌大観』第一・二巻(分担執筆、古典ライブラリー、2016・17年);「付句集『春夢草』古注の性格」(『日本詩歌への新視点 廣木一人教授退職記念論集』風間書房、2017年);「連歌古注釈と付合学習-「一句」に注目させるということ-」(『中世文学』63、2018年);「連歌作品と古注釈の成立について-天文年間の宗牧注を起点として-」(『明星大学研究紀要日本文化学科』28、2020年);「『孤竹』から見る宗牧の連歌指導」(『国文』133、2020年)
概説・一般書

2023年 4月更新

准教授 北﨑 勇帆

きたざき ゆうほ
1991年生。2019年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(東京大学、文学)。2019年高知大学人文社会科学部講師、2022年同准教授を経て、2023年10月より現職。
専攻:国語学(日本語文法史)
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研究紹介
日本語の歴史的研究のうち、文法の歴史を対象とした研究を行っています。現在の興味は、願望・推量・意志・命令といった話者の「主観性」に関わるカテゴリや、複数の事態を発話内で関連付ける接続表現・条件表現にあります。
これと並行して、資料の成り立ちや文体・ジャンルの異なりが文法変化に与える影響の差異や、日本語の文法変化の類型論的な一般性・特殊性についても併せて検討を進めています。
メッセージ
言語は生き物ではなく、生きているのはあくまでも言語を扱う人間です。その人間が世代交代することに伴って起こる言語変化は、基本的には当代の話者には気付かれないし、意識もされにくいものですが、それを資料から遡って自身の手で一つの歴史として記述することに、この分野の研究の面白さがあります。
歴史的な文献に現れる形式なり表現なりを縦に繋げるだけでは歴史は描けないのですが、「縦に繋げる」だけでも実は一苦労です。その楽しさと苦しさを、ともに味わいましょう。
主要業績
「中世・近世における従属節末の意志形式の生起」(『日本語の研究』17(2), 2019);「希望表現の史的変遷―願望を中心に―」(『コーパスによる日本語史研究 中古・中世編』ひつじ書房、2022);「原因・理由と話者の判断」(『日本語文法史研究 6 』ひつじ書房、2022);「意味変化の方向性と統語変化の連関」(『日本語と近隣言語における文法化 』ひつじ書房、2023);「「不定語疑問文の主題化」の歴史」(『日本語文法』23(2), 2023)
概説・一般書

2023年 10月更新