日本東洋美術史

美術史学専門分野では、絵画、彫刻、工芸はもとより、写真や映像、建築や庭園など、あらゆる「イメージ」を研究対象としています。作品の様式や意味についての研究、制作の背景や受容の歴史を考える研究など、その手法はさまざまです。ただし、主観や印象に頼るのではなく、あくまで作品の的確な観察に基づいた実証的研究をめざしています。

美術史学専門分野は、日本・東洋美術史と西洋美術史のふたつの領域に分かれています。 教授、准教授あわせて5名の専任スタッフに加え、総合学術博物館の教授1名が芸術史講座のスタッフを兼任し、6名が幅広い授業を開講しています。 日本の大学では、最も充実した体制をもつ美術史研究室のひとつです。

隣接の美学・文芸学、音楽学・演劇学専門分野、あるいは歴史学や文学など他分野との連携や、海外の研究者との交流も積極的に行っています。近年はコンピューターによる画像データベースの作成、画像処理などにも力を入れています。

教員紹介

教授 橋爪 節也(兼任) 教授 藤岡 穣 准教授 門脇 むつみ

教授 橋爪 節也(兼)

はしづめ せつや
1958年生。東京芸術大学大学院修士課程修了。芸術学修士。東京芸術大学美術学部附属古美術研究施設助手、大阪市立近代美術館(仮称)建設準備室主任学芸員。
専攻:日本美術史/近世近代絵画史
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研究紹介
江戸時代の文人画研究からスタートしたが、大阪画壇研究が停滞していることに危機感を深め、大阪の美術に関する調査研究をはじめた。近世では木村蒹葭堂を中心に、近代では北野恒富に注目して大阪画壇の流れを再検証しようとしている。美術と「文人」というライフスタイルの問題に関心があるほか、心斎橋などの繁華街に展開した美術、デザインなども含めて“大大阪”の時代の都市と美術、人のかかわり方の関連も探っている。
メッセージ
美術館の現場を経験してきた立場から言えば、研究対象として取りあげるべき作家や作品、ジャンルはまだまだ残されています。さらにそれに切り込む新しい見方の発見もまだまだあり得ると思います。そのとき重要になるのがシャープな「眼」です。過去の研究や社会との関係を尊重しつつも、新しい時代の風に吹かれて“美術”に携わることが、自立したシャープな「眼」を養うチャンスになればと思います。
主要業績
「柳澤淇園とその人物画」(『東京芸術大学美術学部研究紀要』第24号、1988)、「近世大坂文人画の展開と問題―木村蒹葭堂とその周辺を中心に―」(『大阪市立博物館大阪学調査研究報告書』1、1998)、 「大阪市美術協会結成における紛擾と「大大阪」の日本画壇・洋画壇」(『大正期美術展覧会の研究』東京文化財研究所編、中央公論美術出版、2005)、「明治二十一年の巨獣たち―大阪府立博物場美術館の天井画群―」(『大阪の歴史』大阪市史編纂所編、2014)など。
概説・一般書
「没後200年記念 木村蒹葭堂―なにわ 知の巨人―」(大阪歴史博物館編、思文閣出版、2003)の企画・カタログ編集、著書『モダン心斎橋コレクション―メトロポリスの時代と記憶―』(国書刊行会、2005)、編著『大大阪イメージ―増殖するマンモス/モダン都市の幻像―』(創元社、2007)、編著『映画「大大阪観光」の世界―昭和12年の モダン都市―』(大阪大学総合学術博物館叢書4、大阪大学出版会、2009)、解題『大日本物産図会』(雄松堂書店、2013)、共編『森琴石 作品集』(東方出版、2010)、編著『戦後大阪のアヴァンギャルド芸術 ―焼け跡から万博前夜まで―』(大阪大学総合学術博物館叢書9、大阪大学出版会、2013)など。

2021年 7月更新

教授 藤岡 穣

ふじおか ゆたか
1962年生。東京芸術大学大学院修士課程修了。芸術学修士。大阪市立美術館学芸員、大阪大学大学院文学研究科助教授、同准教授を経て、2009年4月より現職。1991年に第3回国華賞、2014年に大阪大学総長顕彰受賞。
専攻:東洋美術史
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研究紹介
東アジアの仏教美術を、主に様式と技法という美術史固有の研究手法によりながら研究している。特に近年は金銅仏について、成分分析をはじめとする科学的調査に基づいて制作地・年代を再検討する研究を行ってきた。今後は新たに人工知能による仏像の様式解析も試みたいと考えている。なお、様式や技法にしか関心がないわけではなく、日本では聖徳太子や山岳信仰に関わる美術、中国ではソグドに関わる美術について、彫刻と絵画のジャンルを超えた、そして文学や歴史学などの隣接諸学と連携した研究も行っている。
メッセージ
美術史は感覚的な研究だと思われるかもしれない。美術史を学ぶには確かに感性も必要だが、基本的な研究のあり方は歴史学と共通する点が多い。異なるのは文字よりモノから知り、考えるという点。私たちの生活を振り返ると、文字よりもモノにあふれている。そのモノの発するメッセージに耳を傾けること、モノとの対話が美術史の根幹であり、醍醐味だと思っている。なお、日本・東洋美術史の専門分野で大学院に進学する学生は、多くが学芸員を目指している。
主要業績
「飛鳥寺本尊 銅造釈迦如来坐像(重要文化財)調査報告」(『鹿苑雑集』19、2017年)、「曹仲達様式の継承――鎌倉時代の仏像にみる宋風の源流」(アジア遊学208『ひと・もの・知の往来 シルクロードの文化学』、2017年)、「中国南朝造像とその伝播」(『美術資料』89、2016年)、「興福寺南円堂四天王像の再検討―新たな運慶イメージの構築―」(『フィロカリア』30、2013年)、「興福寺南円堂四天王像と中金堂四天王像について」(『国華』1137・8、1990年)。
概説・一般書
『週刊朝日百科 国宝の美28 彫刻11 快慶と定慶』(朝日新聞出版、2010年)、秋田茂・桃木至朗編『歴史学のフロンティア 地域から問い直す国民国家史観』大阪大学出版会、2008年)、茨木市史編さん委員会『新修 茨木市史 第9巻 史料編 美術工芸』(茨木市、2008年)、大阪市立美術館監修『聖徳太子信仰の美術』(東方出版、1996年)、以下展覧会カタログ『アンコールワットとクメール美術の1000年展』(大阪市立美術館ほか、1997年)、『中国の石仏 荘厳なる祈り』(大阪市立美術館、1995年)、『国宝葛井寺千手観音』(大阪市立美術館、1995年)。

2020年 8月更新

准教授 門脇 むつみ

かどわき むつみ
1970年生。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了・博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、城西国際大学研究員・助教・准教授を経て現職。第14回國華奨励賞。
専攻:日本美術史/中近世絵画史
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研究紹介
狩野派、肖像画、画賛(絵画にちなんで記される詩文)、禅宗に関わる絵画、天皇・皇族や画僧(絵画に堪能な僧)など職業画家ではない人物の作品といった事柄をテーマとしてきました。なかでも狩野探幽に長く関心をもち、その技とともに狩野派の組織、権力者や禅僧・儒者と共有した知識や思想、探幽が描く肖像画の図様と画賛の響き合い、天皇の作画にみる美意識が探幽の御用与えた影響などを考えてきました。今後も人間と美術作品の魅力的な関わりをより確かに捉えていきたい。
メッセージ
美術史学の楽しさは、まずは作品に出会いその造形の芸術性に魅了され、それを把握・分析すること、その上で、作品を生み出した社会の状況や特定の集団の思想や嗜好などに向き合うことにあると考えています。作品は社会の鏡です。時代の空気や人々の思いがいかに視覚化されているか、その視覚化のために画家はどのような表現を用いているか、当時の鑑賞者は図様や表現に何をみたのか。作品は社会や人間について多くを教えてくれます。美術作品を観て調べ考える、そのスリリングな楽しさを多くの学生と共有したいと思っています。
主要業績
[著書]『寛永文化の肖像画』(勉誠出版、2002年)、『巨匠狩野探幽の誕生―江戸初期、将軍も天皇も愛した画家の才能と境遇』(朝日新聞出版、2014年)[論文]「懐月堂派と俳諧に関する一試論」(『浮世絵芸術』145・国際浮世絵学会、2003年)、「詩仙図について」『文学』11(3)(岩波書店、2010年)、「伝狩野元信原画「獣尽図屏風模本」と狩野派の動物画」『國華』1396(國華社、2012年)、「若冲と大典―『素絢石冊』と『玄圃瑤華』の画と詩」中野三敏監修・河野実編『詩歌とイメージ 江戸の版本・一枚摺にみる夢』(勉誠出版、2013年)、「後水尾天皇時代の宮廷絵画―描く天皇、皇族と画壇」(野口剛・五十嵐公一・門脇むつみ『天皇の美術史4 雅の近世、花開く宮廷絵画 江戸時代前期』吉川弘文館、2017年)
概説・一般書
「江戸狩野研究の歩み」『美術フォーラム21』28(醍醐書房・2013年)、『(展覧会図録)松花堂昭乗、書画のたのしみ―麗しき筆あと、愛らしき布袋―』(八幡市立松花堂美術館、2017年)の論考・作品解説、『(展覧会図録)国宝曜変天目と破草鞋』(MIHOMUSEUM、2019年)の論考・作品解説・江月宗玩年譜・系図。

2020年 8月更新