西洋美術史
美術史学専門分野では、絵画、彫刻、工芸はもとより、写真や映像、建築や庭園など、あらゆる「イメージ」を研究対象としています。作品の様式や意味についての研究、制作の背景や受容の歴史を考える研究など、その手法はさまざまです。ただし、主観や印象に頼るのではなく、あくまで作品の的確な観察に基づいた実証的研究をめざしています。
美術史学専門分野は、日本・東洋美術史と西洋美術史のふたつの領域に分かれています。 教授、准教授あわせて5名の専任スタッフに加え、総合学術博物館の教授1名が芸術史講座のスタッフを兼任し、6名が幅広い授業を開講しています。 日本の大学では、最も充実した体制をもつ美術史研究室のひとつです。
隣接の美学・文芸学、音楽学・演劇学専門分野、あるいは歴史学や文学など他分野との連携や、海外の研究者との交流も積極的に行っています。近年はコンピューターによる画像データベースの作成、画像処理などにも力を入れています。
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教員紹介
教授 岡田 裕成
おかだ ひろしげ 1963年生。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程中退。文学修士。大阪大学文学部助手、福井大学教育地域科学部准教授、大阪大学文学研究科准教授を経て現職。 専攻:西洋美術史 |
- 研究紹介
- 専門は、キリスト教美術を中心とする16-17世紀スペインと、植民地時代のラテンアメリカ。30代半ばからは、南米アンデス高地のキリスト教聖堂装飾の実地調査に取り組んできた。植民地美術は、美術史のなかでは周縁的なものとみなされがちだが、ヨーロッパのヘゲモニーのもとでの文化交渉という、われわれ日本人も無縁ではない問題を論じるうえで、注目に値する領域だ。美術史が取り組みうる新たな課題を模索しつつ、これからの自分の仕事を展開したい。
- メッセージ
- 美術史というと、高尚な「名作」のみを論じる学 問と思われがちですが、今は、対象の領域も、扱う地域も大きく広がりつつあります。イメージに込められた多様なメッセージを読み解く知的な関心、その表現の質を見定めるすぐれた感覚、そして時には、作品が生みだされ受容された場に乗り込んでゆく行動力と、多様な力を求められる美術史の研究ですが、それだけにやりがいのあるものだと思います。どうでしょう、あなたもチャレンジしてみては?
- 主要業績
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「《レパント戦闘図屏風》:主題同定と制作環境の再検討」(『香雪美術館研究紀要』、2020、第32回國華賞);Painting in Latin America 1550-1820, Yale University Press, 2015(共著); 『ラテンアメリカ 越境する美術』筑摩書房 2014(第12回木村重信民族藝術学会賞); 『南米キリスト教美術とコロニアリズム』名古屋大学出版会2007年(齋藤晃と共著); Exh.Cat: The Virgin, Saints, and Angels: Latin American Paintings from the Thoma Collection, Stanford University, 2006(共著); “La forma de trabajo de los pintores sevillanos en la época de Velázquez. Una aproximación,” in Velázquez y el arte de su tiempo, CSIC, Madrid, 1991.
- 概説・一般書
- Art & Place. Site-Specific Art of the Americas, Phaidon Press, London, 2013(共著);『スペイン文化事典』丸善2011年(共著); 『ボリビアを知るための68章』明石書店2006年(共著); 『季刊民族学103: 特集 植民地時代アンデスの教会美術』千里文化財団2003年(共編著); 『バルセロナ散策』行路社2001年(共著); 『西洋美術館』小学館1999年(共著); 『世界美術大全集 マニエリスム』小学館1996年(共著); 『名画への旅11 バロックの闇と光』講談社1993年(共著); 『NHKプラド美術館4 民衆の祈りと美』日本放送出版協会1992年(共著).
2020年 11月更新
教授 桑木野 幸司
くわきの こうじ 1975年生。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了(西洋建築史)。ピサ大学大学院博士課程修了。Dottore di Ricerca in Storia delle arti visive e dello spettacolo(文学博士(美術史)・ピサ大学)。Kunsthistorisches Institut in Florenz研究生、2011年4月大阪大学文学研究科准教授を経て、2020年4月より現職。 専攻:西洋美術・建築・庭園史。 |
- 研究紹介
- 初期近代イタリアの庭園空間における知識の表象の問題を中心に、美術・建築・都市に関する諸テーマを広く考察対象とする。建築とは違い、庭は少しでも手入れを怠ると、たちまち形を失い、人が手を加える前の自然の姿に戻ってしまう。まさにそれゆえに、庭は文化のもっとも繊細な表現であり、各時代の芸術・思想を凝縮して体現する特権的な場として機能してきたといえる。そんな過去の庭の姿を生き生きと蘇らせ、美術・建築・哲学・文学・科学といった多様な領域が創造的に交錯する瞬間をとらえてみたいと考えている。
- メッセージ
- えてして美術史家は作品だけを見、建築史家は器だけを見る傾向にあります。でも、美術作品が置かれた「場所」にも注意を向けてみると、いろいろな発見があります。彫刻や絵画の展示空間としても使われることが多かった庭園や街路や広場といった屋外空間は、図面や写真を机上で眺めるのと、実際に自分の足で歩いてみるのとでは、ずいぶんと印象も変わってきます。常に視野を広くたもち、全身で考察対象を体感・経験してゆく、そんな軽やかで敏捷な知性を、美術史研究を通じて培ってほしいと思っています。
- 主要業績
- 概説・一般書
- アンドルー・ペティグリー著、桑木野幸司訳、『印刷という革命:ルネサンス時代の本と日常生活』、白水社、2015年、稲川直樹、桑木野幸司、岡北一孝『ブラマンテ:盛期ルネサンス建築の構築者』、NTT出版、2014年;「建築的記憶術、あるいは魂の究理器械――初期近代の創造的情報編集術とムネモシュネの寵児たち――」『思想』(岩波書店),2009年10月号,pp. 27-49;「プロスペローの苑:初期近代の幾何学庭園における世界表象」『建築と植物』INAX出版社,2008年10月,pp. 146-168.