文芸学

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 文芸学研究室は、芸術学の一分野として文学(文芸)や作家の思想を取り扱います。アリストテレス『詩学』などの西洋古典文献から連なる文芸学の潮流を重視することから西洋古典学も扱いますが、関心の対象は幅広く、古今東西の文学や思想・文学論も視野に収めており、文芸学研究室に所属する学生の研究対象は多岐に渡っています。文芸学は「文芸学という学問自体がどのような学問であるべきか」という問いを内在する学問でもあります。文芸学の名の下で取り組む一人一人の研究が、文芸学という学問を発展させていくという側面があり、研究室では日々切磋琢磨がなされています。

教員紹介

教授 渡辺 浩司 准教授 西井 奨

教授 渡辺 浩司

わたなべこうじ
1962年生。大阪大学文学部卒業。大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。大阪大学助手、助教、准教授を経て2023年1月より現職。
専攻:文芸学/西洋古典学
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研究紹介
(1)古代ギリシア・ローマの弁論術と詩学の研究。プラトンの芸術批判、アリストテレスの芸術擁護、そして弁論術、キケロの弁論術を研究しています。(2)美学と弁論術の関係についての研究。美学成立における弁論術が果たした役割について調べています。バウムガルテンの高弟ゲオルグ・フリードリッヒ・マイアーの『あらゆる学芸の基礎』をゆっくりと読んでいます。バウムガルテン『美学』を分かりやすく紹介した著作ですが、かなりの大部なのでいつ読み終わるか。
メッセージ
作品(テキスト)をどう読み、どう理解し、自分の言葉で述べるか。作品と理論との両方に目配せしてください。
主要業績
「プラトンとアリストテレスの音楽観」、大森敦史・岡林洋・仲間裕子編著『芸術はどこから来てどこへ行くのか』、晃洋書房、2009年、302-318頁。「アリストテレスの『ホメロス問題』」、手島勲矢編著『近代精神と古典解釈——伝統の崩壊と再構築——』(高等研報告書1102)、2012年3月、212—228頁。「私小説の誕生と死」、『日本における『芸術』概念の誕生と死』(平成11年度~平成14年度科学研究費補助金(基盤研究(A)(2))(研究代表者:上倉庸敬)研究成果報告書)、2003年3月、141-149頁。「エクフラシス――ローマ帝政期における弁論教育――」、『弁論術から美学へ――美学成立における古典弁論術の影響』(平成23年度〜平成25年度科学研究費補助金基盤研究(C)(研究代表者:渡辺浩司)研究成果報告書)、2014年3月31日、7-15頁。
概説・一般書
『世界の名前』(共著、岩波新書、2016年)。『若者の未来をひらく』(共著、角川学芸出版、2011年)。『芸術はどこから来てどこへ行くのか』(共著、晃洋書房、2009年)。『ディオニュシオス/デメトリオス 修辞学論集』(共訳、京都大学学術出版会、2004年)。『クインティリアヌス 弁論家の教育 1』(共訳、京都大学学術出版会、2005年)。『クインティリアヌス 弁論家の教育 2』(共訳、京都大学学術出版会、2009年)。『ルキアノス全集 4』(共訳、京都大学学術出版会、2013年)。

2023年 1月更新

准教授 西井 奨

にしい しょう
1982年生。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員PDを経て、2015年11月より現職。
専攻:文芸学/西洋古典学
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研究紹介
オウィディウス、ホラティウス、ウェルギリウスといった古代ローマの詩人たちの文学(文芸)作品を主な研究対象としている。特に「作中でのギリシア・ローマ神話の描かれ方」と「文学(文芸)作品に対する詩人の態度」の二つが、自分にとっての大きな研究テーマである。長らくオウィディウスの作品研究を続けてきたが、これに加えて近年は、ホラティウス『詩論』について美学史との関連から研究を進めている。
メッセージ
「文芸すなわち芸術としての文学の本質や構造を解明しようとする学問」が文芸学という学問であるわけだが、現実的に卒業論文や修士論文で扱えるのは、例えばある一人の作家の作品についてといったような、極々狭いテーマのものとなるだろう。しかし狭いテーマであっても、「作品に対して自分で問いを立て、答えを追求していく」という研究の過程そのものが、「芸術としての文学の本質」に接近することになるのではないかと私は考えている。そしてその「本質」に接近したと実感できた時、良い論文を仕上げることができるのかもしれない。
主要業績

「オウィディウス『名高き女たちの手紙』第13歌におけるラーオダメイア」(『西洋古典学研究』第59号、2011年)、「バットスの石化 ――オウィディウス『変身物語』第2巻676-707におけるadynaton」(共同研究成果報告書『神話表象のアレゴリズム研究』、2012年)、「Hercules’ Honor and Dishonor: Deianira in Ovid Heroides 9」(共同研究成果報告書『ヨーロッパ芸術におけるギリシア・ローマ神話の水脈に関する分野横断的研究』、2014年)、『オウィディウス『名高き女たちの手紙』におけるギリシア神話の諸相』(博士学位論文、2014)

概説・一般書
『神の文化史事典』(共著、白水社、2013年)

2024年 4月更新